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1. 退職後に従業員の横領が発覚した場合

従業員の退職後に、その従業員が実は会社のお金を横領していたことが発覚した場合、どう対処すればよいのでしょうか。
経営者の立場からすれば、横領された金額全額を返還させることは当然として、既に支払った退職金についても返還させたいと思われるのではないでしょうか。また、併せて刑事処罰も受けてほしいと思われる方も多いでしょう。

2. 横領の時効はどれくらい?

「横領された金額全額を返還させたい。」、「刑事処罰を受けさせたい。」、これらについてはいずれも、請求することができる期間が法律で決まっています。
1点目の「横領された金額全額を返還させたい。」というのは、専門的な言葉で言い換えると、民法上の不法行為による損害賠償請求権です。この請求権を行使する、すなわち、「横領したお金を返せ。」という請求ができる期間は、その従業員が横領していたことを経営者側が知ったときから3年間です。ですから、たとえば「10年前に辞めた従業員が横領していたことがつい最近発覚した。」ということであれば、横領の時期からは10年経っていますが、経営者の方がそのことを知ったのはつい最近なので、時効が完成しておらず、横領されたお金の返金を求めることができる場合が多いと思われます。なお、債務不履行責任を理由に、3年より長期の時効を主張すべき事案もあるでしょう。
2点目の「刑事処罰を受けさせたい。」というのは、刑法の話です。刑法上、従業員が不正に会社のお金を自分の懐に入れていた行為は、業務上横領や背任という罪に当たることが多いといえます。業務上横領の時効は、犯罪行為が行われたときから7年です。他方、背任の時効は、犯罪行為が行われたときから5年です。ですから、さきほどの「10年前に辞めた従業員が横領していたことがつい最近発覚した。」というケースの場合、刑事の時効は完成している可能性が高いといえます。経過年数を考えるに当たり、経営者が横領の事実を知っていたかどうかは関係ないというのが、民事の時効と大きく異なる点です。そして、刑事の時効が完成すると、警察に被害届を出したとしても、捜査をしてもらうことはできません。

3. 遡って懲戒解雇にすることはできる?

従業員が自己都合で退職した後、その従業員による横領行為が発覚した場合、自己都合退職を撤回させて遡って懲戒処分にし、退職金を返還させることは可能でしょうか。
まず、従業員が既に退職している場合、遡って懲戒解雇処分とすることはできません。  なぜなら、懲戒解雇処分をするためには、その従業員が在職していること、もう少し正確にいうと、その従業員との間に労働契約が締結された状態であることが前提となるからです。既に従業員が退職している場合、労働契約は存在していないため、遡って懲戒解雇処分をすることはできません。
他方、退職金の返還については、事案によっては可能です。たとえば、退職金規程等に「懲戒解雇相当の事由がある場合には、退職金の全部または一部を不支給とする。」という規定があり、かつ、実際にも退職金の全部または一部を不支給としてもやむを得ないといえるほどの会社に対する背信的行為がある場合です。
もっとも、ここは事案により判断が分かれうるところですので、具体的な事案に応じ、法律の専門家である弁護士の意見を確認するのがよいでしょう。

4. 従業員の横領は早期発見が重要です

このように、従業員の不正な横領行為の発覚が遅れると、刑事処罰を与えることができなくなったり、横領していたにもかかわらず懲戒解雇処分ができないという事態になりかねません。そのほかにも、長時間時間が経過することにより、証拠が集めにくくなるといいう弊害も考えられます。従業員の横領に対し、適切に対処するためには早期発見と初動がとても大切です。

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