従業員が横領した?~証拠の集め方について~
1. 客観的な証拠が最も重要です!
従業員の横領行為その他の不正行為が疑われる場合、直ちにその従業員本人を問い詰めたくなるかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。
従業員が横領していたとして、経営者であるあなたが一番したいことは何でしょうか。罪を認めた上で、弁償してほしいですか?罪を認めたとして、雇用は継続しますか、それとも辞めさせますか?罪を認めず弁償もしない場合、泣き寝入りしますか、それとも民事訴訟を起こしますか?懲役刑などの刑罰まで受けてほしいですか?
もしあなたが、「従業員が罪を認めないなら泣き寝入りもやむなし。」ということであれば、すぐに直接、従業員本人を追及してもよいでしょう。
他方、従業員が罪を認めなかった場合でもきちんと責任を追及したいと考えるのであれば、証拠集めは慎重に進める必要があります。
では、従業員の責任を追及するために最も重要な証拠とは、いったい何でしょうか。
一番事情をよく知っている、横領行為をした従業員本人の自白でしょうか。
横領行為を見たり聞いたりしたという、同僚従業員の話でしょうか。
もちろんそれらも大事ですが、一番重要なのは、本人の自白とは関係のない、「客観的な証拠」です。
これはたとえば、犯行の状況が映っている防犯カメラの画像などです。
2. なぜ「客観的な証拠」が重要なの?
なぜ、自白ではなく、客観的な証拠の方が重要なのでしょうか。
それは、「裁判官が客観的な証拠を重要視するから。」です。
従業員が横領を認めない場合、最終的には民事や刑事の裁判で、裁判官に判断してもらうことになります。この裁判官がもっとも注意を払うのが、人の話ではなく、客観的な証拠です。
横領をした従業員の自白も含め、人の話には、どうしても間違いが入りやすいとされています。見間違い、聞き間違い、他の出来事との混同、時間の経過による物忘れなどは、誰にでもあることですね。あるいは、敢えてうそをつく人もいるでしょう。
他方で、客観的な証拠であれば、防犯カメラの例が分かりやすいと思いますが、実際に起きた出来事を正確に伝えてくれます(もちろん、偽造されていた場合は別です)。
ですから、裁判ではまず、人の話はいったん措き、客観的な証拠として何があるかが検討されます。ここで客観的な証拠を示すことができないと、裁判を有利に進めることが非常に困難になります。そうすると、1で挙げた「経営者であるあなたが一番したいこと」が実現できなくなる可能性が高くなります。
そのため、従業員の横領に気付いた段階から、先を見据えて客観的な証拠を集めていく必要があるのです。
3. 客観的な証拠とは?
「客観的な証拠」と一言で言っても、様々なものがあります。
また、実際の横領行為の内容によっても、どれが重要な証拠になるかは変わってきます。
どのような横領行為の場合、どのような客観的な証拠が必要なのか、それについては、次回以降、お話ししたいと思います。
証拠収集の具体例
1. 客観的な証拠を集めましょう!~インターネットバンキングの場合~