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1.横領被害に気づいたら

 従業員の横領行為その他の不正行為が疑われる場合、直ちにその従業員本人を問い詰めたくなるかもしれません。
 でも、ちょっと待ってください。従業員が横領していたとして、経営者であるあなたが一番望むことは何でしょうか。罪を認めさせた上で、お金を取り戻すこと、すなわち弁償を求めますか?横領犯人である従業員が罪を認めた場合、雇用は継続しますか、それとも辞めさせますか?罪を認めず弁償もしない場合、民事訴訟を起こしますか?懲役刑などの刑罰まで受けさせますか?

 いずれにしても、横領犯人である従業員の責任をきちんと追及したいと考えるのであれば、証拠集めは慎重に進める必要があります。というのも、他の犯罪と比較しても、横領の立証は難しいためです。

 以下、横領の立証について解説いたします。

2.横領の立証の難しさ

 横領の立証の難しさとして、まず、横領の法律上の要件が複雑であることがあげられます。
 一例として、横領罪は、委託物横領罪(刑法252条)、業務上横領罪(刑法253条)、占有離脱物横領罪(刑法254条)に分けられます。この中で一般的に「横領」と呼ばれている委託物横領罪、業務上横領罪の成立には、「自己の占有する」「他人の物」を「横領」していることについて主に問題となります。
 そのため、法律上の要件の一つ一つについて、ご自身のケースで当てはまるか否かを検討していく必要があります。

 次に、横領の立証を難しさとして、立証が不十分である場合に、被害者であるはずの企業にかえって不利益が及ぶ恐れがあることがあげられます。
 例えば、横領犯人である従業員を懲戒解雇する場合です。横領の立証を十分に行わないままに従業員を懲戒解雇すると、後になって解雇が無効であるとの訴訟を提起される可能性があります。仮に横領についての立証が不十分であり、裁判上横領の事実が認められなかった場合には、当該従業員の解雇が無効とされる他、解雇を言い渡してから未払いとなっている賃金を支払うこととなる恐れがあります。

3.横領犯人への対応としてすべきこと

 まずは、企業として横領した従業員に対し、どのような責任を追及するか、決定していくことが必要となります。

 具体的には、横領された被害の回復のため民事上の弁償を優先するのか、あるいは懲役刑を含む刑事上の処罰まで求めていくか、あるいは解雇を行うということがあげられます。

 刑事上の処罰を求める場合には、まずは警察に動いてもらう必要があるため、被害届を提出し、さらには告訴状を警察に受理してもらえるよう働きかけるといった手続きが場合によっては必要となります。
 告訴状が受理されるためには、必要な証拠をきちんと揃え、法律上の条文との適応関係も意識し、立証のポイントを押さえた記載の必要があるでしょう。

 あるいは、まずは横領された被害の回復のため民事上の弁償を優先するということであれば、横領した従業員に横領行為と被害金額をしっかりと認めさせることが重要です。

 横領した従業員にこれらを認めさせた上で、横領の事実や金額、返済方法について記載した誓約書を交わし、返済へと移行していく流れが考えられます。
 ただ、漫然と横領した従業員に横領行為を問い詰めたとしても、必ずしも横領行為や被害金額について認めるとは限りません。そのため、横領した従業員を問い詰める前に、必要な証拠を揃えておく必要があるでしょう。

 また、横領した従業員を懲戒解雇する場合には特に注意が必要です。
 先ほども記載したとおり、注意点としては、横領についての必要な証拠が不足している場合に、立証が不十分であるとして、当該従業員の解雇が無効とされる他、解雇を言い渡してから未払いとなっている賃金を支払うこととなる恐れがあります。
 特に未払賃金の支払いには、企業に与えるインパクトが大きく、現在3年分について遡って請求ができることとされています。

4. 必要な証拠とは

 では、従業員の責任を追及するために最も重要な証拠とは、いったい何でしょうか。

 一番事情をよく知っている、横領行為をした従業員本人の自白でしょうか。横領行為を見たり聞いたりしたという、経理担当者等の同僚従業員の話でしょうか。

 もちろんそれらも大事ですが、一番重要なのは、本人の自白とは関係のない、「客観的な証拠」です。

 これはたとえば、犯行の状況が映っている防犯カメラの画像や帳簿、横領した従業員のメールのやりとりなどです。

5. なぜ「客観的な証拠」が重要なの?

 なぜ、自白ではなく、客観的な証拠の方が重要なのでしょうか。

 その理由の一つは、「裁判官が客観的な証拠を重要視するから」です。
 刑事上の責任を追及する場合、最終的には裁判官が有罪であるか、刑罰としてどの程度が適切かというところを判断します。
 また、横領した従業員が横領行為を認めない場合は、民事上の弁償を求める場合でも、最終的には裁判で争うこととなります。
 民事や刑事の裁判で、裁判官に判断してもらうことになるにあたって、この裁判官がもっとも注意を払うのが、人の話以上に、客観的な証拠です。

 横領をした従業員の自白も含め、人の話には、どうしても間違いが入りやすいとされています。見間違い、聞き間違い、他の出来事との混同、時間の経過による物忘れなどは、誰にでもあることですね。あるいは、敢えてうそをつく人もいるでしょう。

 他方で、客観的な証拠であれば、防犯カメラの例が分かりやすいと思いますが、偽造の恐れも一応あるとはいえ、実際に起きた出来事をある程度正確に伝えてくれます。

 ですから、裁判ではまず、人の話はいったん措き、客観的な証拠として何があるかが検討されます。ここで客観的な証拠を示すことができないと、裁判を有利に進めることが非常に困難になります。そうすると、1で挙げた「経営者であるあなたの一番の希望」が実現できなくなる可能性が高くなります。
 客観的な証拠なく、人の話のみを根拠とした場合、対象者が証言を覆した場合、証拠が無くなることとなってしまします。
 一例として紹介いたしますと、当初は横領を認めていた犯人が、やり取りを繰り返す中で途中で横領を否認していくことがよくあるケースとしてあげられます。
 また、証言を約束してくれていた人と別途のトラブルが生じ、証言を拒否されてしまうということも考えられます。

 そのため、従業員の横領に気付いた段階から、先を見据えて客観的な証拠を集めていく必要があるのです。

6. 横領の立証のために

 「客観的な証拠」と一言で言っても、様々なものがあります。
 また、実際の横領行為の内容によっても、重要な証拠はそれぞれ異なります。

 この点、弊所は横領事件を数多く扱っている法律事務所ですので、さまざまな状況に応じた適切な対応をご提案することができます。
 横領発覚以降の、対応方針決定の部分からご相談いただくことも可能です。
 例えば、被害に遭ってしまった金銭を取り戻す民事上の対応を最優先とすることも可能ですし、刑事上の対応を合わせてご相談いただくことも可能です。
 民事刑事問わず、企業様のご希望に合わせた対応をご提案いたします。

 また、具体的な事案に応じて、ご事情につき丁寧にヒアリングを行い法律上の要件の該当の有無を検討し、既に手元にある証拠についても聞き取りをさせていただいた上で、今後追加で必要となる証拠についても、アドバイスさせていただいております。

 また、企業様のご依頼があった際には、証拠収集や調査自体を弁護士と協力して行うことも可能です。
 実際、弊所において、監視カメラ設置の場所や日時についてもアドバイスを行い、このアドバイスに基づき実行に移していただいたことで、横領の瞬間を監視カメラの映像証拠として獲得した事案もございます。

 横領被害に遭ってしまったが今後の進め方がわからない場合や、そもそも横領の立証のために必要な証拠について判断が難しいという場合には、横領とその対応について多くのノウハウを蓄積した弊所まで、是非ご相談ください。横領問題の一日でも早い解決のために全力でサポートさせていただきます。
 加えて、今後の再発防止のための社内体制の整備についても、是非ご相談いただければと存じます。

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