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1. インターネット上の誹謗中傷

今回は、横領から離れて、従業員によるインターネット上の誹謗中傷についてお話をしたいと思います。

最近は、多くの方が、フェイスブックやTwitterなどのSNSを利用していると思われます。そして、従業員の中には、これらのSNS上に、自分が勤めている会社や上司の悪口などを書いてしまう人がいます。これらの場合の多くは、静観していても問題がないかもしれません。ところが、何度もしつこく誹謗中傷的な書込みがされていたり、その書込みが元となって「あの会社は最悪だ」などと炎上していたり、書き込まれている内容が社内秘に当たるような場合など、ただ放置しておくわけにはいかないような事態に陥ることもあります。

では、そのような場合、会社として、どのような手を打つことができるでしょうか。

2. 書込みを削除したい

まず考えられることは、問題となっている書込みを削除することです。

もっとも、「削除」と一言でいっても、これがなかなか容易ではありません。

たとえば、従業員が、本名で作っているアカウントを利用して堂々と誹謗中傷的な書込みをしている場合であれば、従業員を説得して、そのような書込みを削除させればよいでしょう。

ところが、誹謗中傷的な書込みの多くは、匿名でされています。また、多くのSNSでは、書き込むことは自由でも、書き込んだ後は、書き込んだ本人であっても書込みを削除できず、サイト管理者等に削除を依頼しなければならない仕組みになっています。

このような場合には、サイト管理者等に対し、書込みを削除してもらう必要があります。

その方法としては、①削除依頼フォームなどから依頼する方法や、②削除仮処分命令の申立てをする方法などがあります。

①の方法は、サイト管理者に対し、サイト内の削除依頼フォームを利用して、特定の書込みの削除を依頼するものです。したがって、一般の方でも簡単に利用することができます。ただ、書込みを削除してもらうためには、その書込みが名誉権などの権利を侵害していると考える根拠などを、法的観点から適切に説明していく必要があります。この説明が不十分だと、削除してもらえないこともあるでしょう。

他方、②の削除仮処分命令の申立ては、裁判所に対する手続きです。すなわち、「サイト管理者(あるいはサーバー管理者)に対し、その記事を削除せよという命令を仮に出してください。」ということを裁判所に申し立てます。そのため、適切に法的主張を組み立てていく必要があることはもちろん、削除せよという命令を受けることとなるサイト管理者やサーバー管理者が誰かということを、明確に特定する必要があります。ところが、この相手方を明確にすることが意外と難しく、インターネットに関する専門的な知識が必要になることもあります。

さらに、①②のいずれの方法であっても、複数のSNS上に誹謗中傷的な書込みがされている場合には、それぞれに対し、同じように削除を求めていく必要があります。

3. 小括

このように、書込みの削除だけでも、専門的な知識が必要になったり、手間がかかったりすることが多々あります。これらを一般の方が1人で行うことは、なかなか大変な作業になるでしょう。

それでは次に、誹謗中傷的な書込みをしていた従業員本人に対し、責任を追及していくことはできるでしょうか。これについては、次回の記事でご説明したいと思います。

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【著者情報】


2001年 京都大学法学部 卒業

2014年 ボストン大学ロースクール修了(LL.M. in Banking & Financial Law)

北陸電力株式会社、検察官を経て、2007年に弁護士となる

以後約16年間シティユーワ法律事務所に所属し、2023年より弁護士法人グレイスにて勤務

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