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2025年6月20日

 企業経営において、経理部門は会社の財産・資産を管理する重要な部門ですから、その信頼は事業継続の基盤となります。しかしながら、その重要な役割を担う経理担当者による横領は、企業の財務基盤を揺るがし、対外的信用を失墜させる深刻な事態を招きかねません。

 また、対内的にも、経理担当者による横領を容認したり見過ごしたりしてきたと認識されることで、企業内の統率を取ることも難しくなってしまいます。

 以下では、実際にどのような手口で横領が行われるのか、その兆候をどのように察知すべきかご紹介した上で、企業が講じるべき具体的な防止策について解説します。

経理担当者による横領の手口

 横領の手口は多岐にわたりますが、大別すると以下のようなものに分けられます。

現金の着服

 現金の着服は、会社の現金を直接管理する立場にある経理担当者にとって、最も単純かつ実行しやすい手口です。以下のような手口が考えられるでしょう。

売上現金の抜き取り

 会社に知られないように、レジや金庫から現金・売上金を抜き取る方法です。経理担当者が行う場合には、帳簿上の売上記録を改ざんすることで隠蔽を図るケースがほとんどです。売上記録が改ざんされてしまうと、その発覚は困難になります。

小口現金の不正流用

 従業員への仮払金や消耗品費など、少額の現金出納を装って私的に流用する方法です。やはり経理担当者としての地位を悪用して、架空の領収書や目的外の使途を記載した領収書を捏造することで、辻褄を合わせようとすることが多いです。

預金の着服

 会社の銀行口座から資金を不正に移動させる手口ですので、横領の被害金額が大きくなる傾向があります。

架空の振込

 最も多いのが、存在しない取引先や個人への振込を装い、会社の預金を自身の口座や共犯者の口座に振り込む方法です。架空の取引先と受発注記録を作成したり、親族・友人の名義を利用して自己の口座に転々送金したりするケースが典型です。

二重支払と差額の着服

 また、同じ請求書に対して故意に二重に支払いを行い、そのうちの一方を自己の利益とするという悪質な方法もあります。経理システム上の管理が不十分な場合にはごまかしやすいので、経理担当者が行いがちです。

振込先口座情報の不正変更

 正規の取引先への振込先口座情報を、担当者が自身の口座に変更するという大胆な着服方法もあります。取引先からの振込みの確認を経理担当者に任せてしまうと、発覚が遅れる原因となります。

水増し請求

 更に、架空の取引や実費を上回る金額を会社に請求させ、差額を不正に取得する手口もあり得ます。社外に共犯者がいて、接待や現金授受などのリベートを得て協力しているケースが多いです。

架空の取引先の作成

 存在しない会社や個人を取引先として登録し、そこから架空のサービスや商品に対する請求書を発行させ、会社から資金を支払わせる方法がオーソドックスです。取引先の営業担当者個人に当てた送金などがあれば、要注意です。

仕入価格の水増し

 仕入業者と協力して、実際の仕入価格よりも高額な請求書を作成させ、その差額を業者と山分けしたり、自身が全額受け取ったりする手口もあります。

経費の水増し請求

 会社に対する詐欺にもなり得ますが、出張旅費、交際費、交通費などの経費を実際にかかった金額よりも多く計上し、その差額を着服するパターンもあります。

帳簿の改ざん

 ちなみに、上記の着服や水増し請求を隠蔽するために、経理担当者が会計帳簿や関連記録を意図的に変更することもあります。これは、上記の横領行為とセットで行われることがほとんどです。

売上・収益の過少計上

 売上の一部を帳簿に記載せず、着服した現金の辻褄を合わせる目的で不正に売上等を過小計上することがあります。過少計上した分の差額は、自ら着服しているケースが多いです。

費用・損失の過大計上

 また、逆に、実際には発生していない費用や、ごく少額の費用を不当に多額に計上することで、着服した金額を「費用」として処理し、発覚を防ぐ場合もあります。

勘定科目の不正流用

 ちなみに、不正な支出を別の正当な勘定科目(例えば消耗品費、雑費など)に付け替えて計上し、会社経営者・税理士からの発覚を免れようとするという非常に狡猾な手法を用いる者もいますので、注意が必要です。日頃からの、細やかな会計帳簿の確認が必須といえるでしょう。

経理担当者の横領を疑うべきサイン

 上記のとおり、横領行為は巧妙に隠蔽されるため、早期発見には細心の注意が必要です。このため、直接横領行為に気付くことは非常に困難です。むしろ、以下のような経理担当者の横領を疑うべきサインに目を向けるようにすることをお勧めします。

帳簿と実際の残高が合わない

 まず、帳簿と実際の残高が合わないことが、最も直接的で危険なサインですから、この事実が発覚した場合には、早急な確認・調査が必要といえます。

現預金残高の不一致

 まず、定期的な現金確認や銀行残高照合において、会計帳簿上の残高と実際の現金・預金残高に継続的な差異が生じることが挙げられます。差額が大きい場合や、経理担当者による説明が困難な場合、不正の可能性が高いです。

在庫・資産の不一致

 また、定期的な棚卸などで、帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量に大きな差異が見られることもあります。これは在庫品の横領のサインかもしれません。

同じ業者への高額支払いが続いている

 次に、同じ業者への高額支払いが続いている場合、外部の者と協力した上での横領や水増し請求の可能性があります。

不自然な取引頻度や金額

 他の業者と比較して、特定の業者への支払い頻度が異常に高かったり、支払金額が突出して高額であったりする場合には黄色信号といえます。また、特定の業者の営業担当者個人宛ての送金がある場合にも要注意です。

取引内容の曖昧さ

 また、取引業者からの請求書の内容が曖昧で、提供されたサービスや商品が不明瞭である場合にも注意が必要です。帳尻合わせのために、適当な取引を作り上げて各種請求書等を作成しているだけである可能性があります。

取引業者の実態不明

 更に、取引業者の所在地が不明確であったり、電話が繋がりにくい・ウェブサイトがないなど、実態が不確かな取引がある場合にも、詳細な調査・確認が必要といえるでしょう。経理担当者が架空の業者をでっち上げている可能性があります。

経理担当者がデータを一人で管理している

 また、そもそも、経理担当者一人がデータ管理している場合には、不正が起きやすい環境を整えてしまっているといえますから、注意が必要です。

 特に、経理担当者がやけに羽振りがよくなったという噂が広まり始めたら、もはや経理を任せることをやめて調査を実施するべきでしょう。

経理担当者による横領の証拠となり得るもの

 ここで、経理担当者による横領の証拠となり得るものをご紹介します。

会計データ

 まず、会計帳簿などの会計データの内容が証拠となります。実際の取引・現金等の残高との不一致などは裁判になった場合にも重要な効力を有するといえます。

社内メール

 次に、社内メールにも重要な証拠が隠れていることが多いです。経理担当者は、場合によっては、外部の協力者との横領行為について社内メールを用いてやり取りしている場合もあります。

社員の証言

 最後に、目撃者・事情を知る従業員等の写真の証言も重要な証拠となります。早い段階で録音を取りながら事情聴取するなど証拠化して、記憶が風化する前に詳細な証言を得ておくべきです。

経理担当者による横領を防ぐには

 それでは、経理担当者による横領を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか?以下、解説します。

複数人での承認フローを導入

 まずは、不正行為を単独で実行したり、隠蔽したりできないように、複数人での経理承認フローを導入しましょう。これが最も重要な横領防止策といえます。

 このような経理承認フローとしては、①支払・送金等についての多段階承認プロセスの導入、②印鑑・パスワードの複数人管理体制構築などが考えられます。

帳簿と実際の残高を定期的にチェックする

 次に、継続的・定期的に、帳簿と現物(在庫品等)・現預金残高を照合することも重要です。この場合には、経理担当者以外の第三者が照合作業を行う体制を確立すべきです。

突発的な内部監査・外部監査の実施

 また、突発的な内部監査・外部監査を実施するようにすると、不正抑止効果が見込めます。経営層や監査部門による定期的な内部監査に加え、公認会計士や税理士による外部監査を定期的に受けることは、客観的な視点から経理処理の適正性を担保し、不正を早期に発見する上で非常に有効です。ぜひご検討ください。

まとめ

 以上のとおり、経理担当者の横領手口と疑うべきサイン等について解説しました。当事務所では、横領被害の予防と、実際に被害が発生した場合の対応の双方に対応できます。お悩みの場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。

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【著者情報】


2001年 京都大学法学部 卒業

2014年 ボストン大学ロースクール修了(LL.M. in Banking & Financial Law)

北陸電力株式会社、検察官を経て、2007年に弁護士となる

以後約16年間シティユーワ法律事務所に所属し、2023年より弁護士法人グレイスにて勤務

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